ここで目指すのは、Pythonを一から勉強してプログラマーになることではない。日々の面倒な作業を減らすために、AIへ相談しながら自分専用の小さなアプリを作ることだ。
この記事では、ChatGPT、Microsoft Copilot、Google Geminiなどのブラウザ版AIを使う。CodexのようにPC上のファイルを直接扱える開発環境を導入すれば、さらに高度なソフトを作りやすい。しかし今回は、ローカル環境を広く変更する許可が取りにくい職場などを想定し、ブラウザと最小限の道具で進める。
01
クリアする条件は2つ
- Pythonのインストールが認められている
- ブラウザ版AIを使えるオンライン環境がある
この2つがそろえば、プログラミング経験がほとんどなくても、AIと会話しながらオリジナルアプリを作り始められる。会社や学校のPCでは、ソフトの導入・コードの持ち込み・外部AIへの情報入力に独自の規則がある。許可された範囲で、機密情報や個人情報をAIへ送らずに進めることが前提だ。
ライブラリの導入にはターミナルを使う
Pythonには、最初から使える機能だけでなく、後から追加できる「ライブラリ」がある。ライブラリは、表計算、画像処理、PDF操作などの機能を部品として借りる仕組みだ。AIが作ったコードによっては、初回だけターミナル(黒い文字入力画面)から導入コマンドを実行する必要がある。
py -m pip install ライブラリ名
必要なライブラリ名やコマンドはコードごとに異なるので、AIへ「このコードに必要なライブラリと、Windowsでのインストールコマンドを教えて」と聞けばよい。許可されていないライブラリを勝手に追加せず、職場では導入可否を確認する。
職場でライブラリを導入できないとき
会社のPCでは、外部との通信にプロキシサーバーを使っている場合がある。その環境では、通常のpip installが通信エラーになり、ライブラリを取得できないことがある。
原因が分からないときは、表示されたエラーから会社名、ユーザー名、サーバー名、社内URLなどを取り除いたうえで、AIへ「このPCがプロキシを使っているかどうかを、設定を変更せずに調べるにはどうしたらいい?」と質問してみる。使用中のWindowsと、実行したコマンドも一緒に伝えると回答を得やすい。
コードのあるフォルダーからCMDを開く
コマンドプロンプトをスタートメニューから直接開くと、最初の場所がデスクトップやユーザーフォルダーになりやすい。その状態では、保存したPythonファイルの場所まで移動する操作が必要になる。VS Code内のターミナルも便利だが、初めは表示や操作が分かりにくいことがある。
最も簡単なのは、Pythonコードを保存したフォルダーをエクスプローラーで開き、上部のアドレスバーへcmdと入力してEnterキーを押す方法だ。右上の「検索欄」ではなく、現在のフォルダー名やパスが表示されている欄へ入力する。
C:\Users\user\Documents\作業フォルダー> py main.py2- アドレスバーへ
cmdと入力してEnter - 最初から目的のフォルダーが選ばれた状態で開く
CMDからコードを起動するなら、表示された画面でpy main.pyと入力する。ファイル名が違う場合は、main.pyの部分を実際の名前へ置き換える。
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まず知っておきたいファイルの役割
.pyアプリの設計図
Pythonの命令を書いたファイル。料理でいえばレシピに近い。Python本体がこの設計図を読み、画面を出したり計算したりする。
.json設定や記録を入れる箱
名前、色、前回の選択などを整理して保存するテキストファイル。人にもAIにも読みやすいが、基本的に単体では動かない。
.exe配れる完成品
ダブルクリックで実行できるWindows用アプリ。Python未導入のPCでも使える形にまとめられる一方、作成元や安全性の確認がより重要になる。
開発中は主に.pyを直し、必要に応じて.jsonへ設定を保存する。完成後に配布しやすい.exeへまとめる、という順番で考えると分かりやすい。
03
ブラウザ版AIとメモ帳でも始められる
AIに「Pythonを使いたい」と相談すると、Visual Studio Code(VS Code)を勧められることが多い。VS Codeには入力補助、実行、デバッグなど便利な機能がある。ただし、初心者が小さなアプリをAIと一緒に作る段階なら、Windowsのメモ帳でも十分にコードを保存できる。
もちろん、VS CodeをインストールしてもAIと一緒に進めるうえで問題はない。使える環境なら導入してよい。大切なのは、VS Code自体がPythonではないことだ。VS Codeを使う場合でも、コードを実行するPython本体は別に必要になる。
メモ帳から.pyで保存する方法
メモ帳は、そのまま保存するとファイル名の末尾へ.txtを付けることがある。Pythonのコードとして保存するときは、「名前を付けて保存」の画面で次の3点を確認する。
- ファイル名を
main.pyなど、末尾が.pyになる名前にする。 - ファイルの種類を「テキスト ドキュメント」から「すべてのファイル」へ変更する。
- 文字コードは「UTF-8」を選んで保存する。
main.py.txtになってしまった場合はPythonファイルとして扱われない。エクスプローラーで拡張子を表示し、末尾の.txtを削除してmain.pyへ変更するか、上の手順で保存し直す。
Windowsのバージョンによって配置や表記は多少異なる。
メモ帳をコード編集に使うときの詳しいコツは、別記事「メモ帳を使いこなそう!」で扱う。
04
最初に「画面と処理を分けて」と頼む
最初から1つの巨大なファイルにすべてを書かせると、後から機能を直すたびに別の場所まで壊れやすい。そこで、最初の依頼に次の一文を入れる。
Pythonで動くGUIアプリを作りたい。GUIは main.py に置き、実際の動作コードとは分離して作って。main.pyを受付や操作パネル、別の.pyを裏側で働く担当者と考えるとよい。画面だけ変えたいときと、計算やファイル処理だけ変えたいときの影響を分けやすくなり、AIへ修正を頼む際も対象を伝えやすい。
コードには説明コメントを細かく入れてもらう
コードが長くなると、AIは毎回全文を出せず、「この関数だけ差し替えてください」「この行の下へ追加してください」と差分で修正を示すようになる。その段階でコードが読めないと、差し替える場所を探すだけでもかなり難しい。
そこで、最初から各処理の目的や、どこを変更すれば何が変わるのかをコメントとして書かせておく。コメントはコードの動作には影響しない説明文で、いわば設計図に貼る付箋である。見出しになるコメントが細かく入っていれば、AIから「○○のコメントがある部分を差し替えて」と案内してもらえる。
プログラミング初心者でも後から修正箇所を探せるように、コードには処理の目的と変更ポイントが分かる説明コメントを細かく入れて。修正を頼むときも、「差し替え対象のコメント名と、置き換える範囲を明記して」と付け加えると迷いにくい。可能であれば、変更対象の関数を丸ごと提示してもらう。
Pythonでは「インデント」もコードの一部
インデントとは、行の先頭に入れる字下げのことだ。文章では見た目を整えるために使うが、Pythonでは「どの処理が、どのまとまりに属しているか」を示す文法として扱われる。
if data_exists:load_data()show_window()上の例では、load_data()だけが「データがある場合」に実行され、show_window()は条件に関係なく実行される。字下げが1段ずれるだけで、エラーになったり、動作の意味が変わったりする。
- 基本は半角スペース4個で1段下げる。
- 全角スペースを使わない。
- タブと半角スペースを同じコード内で混ぜない。
- AIのコードを貼り付けるときは、先頭の空白も含めてコピーする。
差分を貼り替えた後にIndentationErrorやTabErrorが出たら、エラーメッセージと該当箇所の前後をAIへ見せる。「インデントを半角スペース4個で統一したコードを出して」と頼むのも有効だ。
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テスト起動はCMDファイルを作らせる
ターミナルを開き、フォルダーを移動し、Pythonコマンドを入力する作業は、初心者には意外とつまずきやすい。そこで、AIにダブルクリック用のCMDファイルも作ってもらう。
作成したPythonのコードを起動する「test.cmd」を作って。ただし、pauseは入れず、GUIを終了したらCMD画面も閉じるようにして。test.cmdをmain.pyと同じフォルダーへ保存すれば、以後はダブルクリックでテストしやすくなる。
クリックしても起動しないとき
エラーが起きるとCMD画面が一瞬で閉じ、原因を読めないことがある。その場合は、画面を閉じずに止めるデバッグ版をAIへ頼む。
pauseが入っているバージョンの「debug.cmd」を作って。debug.cmdを起動すると、原因となるメッセージがCMD画面に残る。その全文をコピーしてAIへ貼り付ければ、どこを直すべきか判断してもらいやすい。パスワード、社内パス、顧客名などが表示されていないかは、送信前に必ず確認する。
06
完成したら、そのまま使うかexe化する
自分のPCだけで使うなら、完成後もtest.cmdから起動して構わない。Pythonがインストールされ、必要なファイルが同じ場所にそろっていれば動かせる。
他の人へ配る場合は、Python未導入のPCでも起動しやすい.exe化が望ましい。代表的な方法はPyInstallerで、ターミナルから次のように進める。
py -m pip install pyinstaller
pyinstaller --onefile --windowed main.py
--onefileは1つの実行ファイルへまとめ、--windowedはGUIアプリで余分なコンソール画面を出さない指定だ。通常はdistフォルダー内にexeが作られる。外部画像や設定ファイルを使うアプリは追加指定が必要になるので、その場合はフォルダー構成をAIへ伝えてコマンドを作ってもらう。
exeは組織のセキュリティ製品で制限される場合がある。配布前に、使用先の規則・ライセンス・安全確認を満たすこと。exe化したPCと同じOS向けに作成するのが基本である。
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AIとの開発に役立つ軽量エディター
AIとの会話を前提にした開発では、.pyと.jsonを開き、保存前の構文確認、テスト用CMDの作成、実行までを1画面で行えると便利だ。手元の「AI Code Editor」は、Python標準ライブラリだけで動く軽量なコードエディターとして、その用途向けに作っている。
下のコードは、そのままコピーして使用できる。全文をコピーし、メモ帳などへ貼り付けてaice.pyという名前で保存する。Python標準ライブラリだけを使っているため、追加ライブラリの導入は不要だ。
py aice.py
ターミナルから上のコマンドで起動するか、この記事で説明した方法を使い、AIへaice.pyを起動するCMDファイルを作らせてもよい。コードの利用や持ち込みは、使用するPCの管理規則に従う。
コードを読み込んでいます…
CONCLUSION
分からないことを、分かる言葉でAIに返す
最初から正しい専門用語を使う必要はない。「このボタンを押したら表をまとめたい」「黒い画面がすぐ閉じる」と、自分に見えている状況をそのまま伝えればよい。
Pythonを導入でき、ブラウザ版AIを使える。まずはその2条件から、小さな作業を1つだけ自動化してみる。